葉巻スイタイ

シガールームの換気設計

葉巻の煙は、窓を開けても換気扇を1台足しても追いつきません。必要なのは、給気口から入った空気が喫煙位置を通って排気口へ抜ける一方通行の気流と、一般的な住宅の24時間換気の20倍にあたる風量です。必要換気量の計算、負圧のつくり方、排気口と給気口の位置、設備の方式の違いまでをまとめます。

更新日: / 葉巻スイタイ編集部

結論——窓開けや換気扇1台では、葉巻の煙に足りません

葉巻は1本に40分から1時間かかります。紙巻きたばこのように数分で終わらず、フィルターを通さない濃い煙が、その間ずっと部屋に出続けます。一度でも室内で試したことがあれば、翌朝の部屋の空気で結果はご存じのはずです。

住宅の居室には24時間換気の設置が義務づけられていますが、その設計は換気回数0.5回/h、つまり2時間かけて部屋の空気が1回入れ替わる程度です。葉巻を吸う部屋に必要なのは、一つの目安として10回/h以上。桁が違います。窓開けも、風向きが変われば煙が室内に押し戻され、屋外では煙をそのまま近隣へ流すことになります。

シガールームの換気で満たすべき条件は、次の3つです。

  • 十分な風量——換気回数10回/h以上が一つの目安。部屋の容積から必要な風量を計算して機種を選びます。
  • 一方通行の気流——給気口から入った空気が、喫煙位置を通って排気口へ抜ける道筋をつくります。
  • 負圧の維持——排気の量を給気より少し多くし、空気が常に廊下から部屋へ向かって流れる状態を保ちます。

この3つは設備を買えば手に入るものではなく、部屋の条件に合わせた設計の結果です。以下、順に見ていきます。

換気の基本は「給気から排気へ」の一方通行をつくること

換気は「出す」と「入れる」がセットです。空気は圧縮できないので、1時間に240m³を外へ出すなら、同じ量がどこかから入ってきます。ここを設計していない部屋に排気ファンだけ付けても、期待した風量は出ません。

給気口がないと、空気はドアの下端のわずかな隙間、コンセントボックスの裏、24時間換気の給気口といった「たまたま開いているところ」から引っ張られます。抵抗が大きいので風量は落ち、ファンはうなるだけで煙は動きません。しかも吸い込む先は廊下や隣室なので、ドアを開けた瞬間に室内の空気が押し出される状態にもなりがちです。

逆にいえば、給気口を計画的に設けることは、風量を確保する手段であると同時に、部屋の中の空気の通り道を自分で決める手段でもあります。どこから入れてどこから出すかを決めた瞬間に、煙がどう流れるかが決まります。

必要な風量はどう決めるか——換気回数10回/hが目安

計算そのものは単純です。

部屋の容積(m³)× 換気回数(回/h)= 必要な風量(m³/h)

6畳・天井高2.4mの部屋なら、床面積は約10m²、容積は約24m³です。ここに10回/hを掛けて、必要な風量は約240m³/h。広さ別に整理すると次のようになります。いずれも目安で、実際には喫煙する本数、同時に吸う人数、天井高、家具の量によって変わります。

広さ床面積の目安容積の目安(天井高2.4m)10回/hの場合15回/hの場合
3畳約5m²約12m³約120m³/h約180m³/h
6畳約10m²約24m³約240m³/h約360m³/h
8畳約13m²約31m³約310m³/h約470m³/h
10畳約16m²約39m³約390m³/h約580m³/h

1人で1本を楽しむなら10回/h前後、2人以上が同時に吸う、あるいは友人を招いて長時間過ごす想定なら15回/h前後を見ておく、という考え方をします。6畳の240m³/hは、同じ部屋の24時間換気(約12m³/h)の20倍にあたります。この差が「窓を開ければいい」との距離です。

機種を選ぶときに一つ注意が要ります。カタログに載っている風量は、多くの場合ダクトなどの抵抗がない状態の値です。実際にはダクトの長さ、曲がりの数、外部フードの網が抵抗になり、風量は落ちます。必要風量ちょうどの機種を選ぶと現場では足りません。経路の抵抗を見込んで余裕のある選定をするのが前提で、この判断は設計者の領分です。

「負圧」にすると、ドアを開けても煙が出ていきません

家族と暮らす家では、室内の快適さより「部屋の外に漏らさないこと」のほうが重要です。その鍵が負圧です。排気の量を給気よりわずかに多くしておくと、部屋の気圧が廊下より少しだけ低い状態になり、空気は必ず廊下から部屋へ向かって流れます。ドアを開けた瞬間も、開口部を通る風の向きは室内向きのままです。

参考までに、業務用の喫煙専用室では、出入口で室外から室内へ0.2m/s以上の気流を確保することが技術的な基準とされています。住宅の工事に直接適用される基準ではありませんが、「開口部で内向きの流れが体感できる程度」という目標の置き方は、住宅でも同じ考え方が使えます。

注意したいのは、負圧が家全体に及ぼす影響です。気密性の高い住宅で強い排気をかけると、家のほかの換気設備や燃焼機器の空気の流れに影響することがあります。特に、屋内の空気を使って燃焼する種類の暖房機器や給湯器が同じ空間にある場合は、安全に関わる確認事項になります。シガールームの換気は部屋単体ではなく、家全体の換気計画とセットで検討するものと考えて、設備がある場合は必ず設計者に伝えてください。

排気口と給気口は、どこに付けるか

同じ風量でも、開口部の位置で煙の減り方は変わります。基本形は「排気は高く、給気は低く、対角に」です。

  • 排気は高い位置に——葉巻の煙は暖かく、上へ昇って天井付近に溜まります。吸い込み口は天井、または壁の高い位置に設けます。
  • 排気は喫煙位置の近くに——煙が広がる前に捕まえるのが最も効率的です。座る椅子の真上から斜め上あたりが基本になります。椅子の位置を先に決めてから換気を設計する、という順番が理想です。
  • 給気は対角の低い位置に——部屋を斜めに横断する気流ができ、よどみが減ります。給気と排気が近いと、入った空気がそのまま出ていくだけで部屋の空気が動きません。
  • 家具でふさがない——背の高い棚やソファの背もたれが給気口の前を塞ぐと、せっかくの経路が働きません。レイアウトも換気計画の一部です。

屋外側にも考えることがあります。

  • 吹き出し先——排気の出口が自宅の給気口・窓・隣家の窓やベランダに近いと、出した煙が戻ってきたり、近隣とのトラブルの原因になったりします。給気口とは十分に距離を取ります。
  • 外部フード——雨の吹き込みを防ぐ形状、虫の侵入を防ぐ網、風で逆流しないためのシャッターがセットになります。
  • 掃除できること——葉巻のヤニは網やフードに付きます。詰まれば風量は落ちるので、手が届く位置に付けて定期的に清掃できるようにしておきます。

換気設備には、どんな方式があるか

住宅で使われる方式は大きく次のように分かれます。どれを選ぶかは、部屋が外壁に面しているか、必要な風量がどれくらいか、静かさをどこまで求めるかで決まります。

方式特徴向いている条件
壁付けのパイプファン外壁に直接穴を開けて排気する最も簡単な方式。風量は小さめ。外壁に面した3畳程度の小部屋。単独では風量が足りないことが多い。
壁付けの有圧換気扇羽根が大きく風量を稼げる。運転音は大きくなりやすい。外壁に直接面していて、音がそれほど問題にならない部屋。
シロッコファン+ダクト天井裏などに本体を置き、ダクトで外壁まで引く。抵抗に強く静かにしやすい。家の中央にある部屋、マンション、6畳以上の本格的な計画。
給気ファンを併用する方式給気も機械で行い、排気量を少し多くして負圧を保つ。風量が安定する。気密性の高い住宅や、自然給気だけでは空気が入りにくい部屋。

6畳以上で本格的に計画するなら、天井裏にファン本体を置いてダクトで屋外へ引く方式が中心になります。本体を室内から離せるので運転音が耳につきにくく、外壁までの経路も自由に取れるからです。ダクトを太くして風の速さを落とすほど音は静かになるので、天井裏に確保できる高さも設計の条件になります。

静かさは後から足せません。「音楽をかけながら1時間過ごしたい」「深夜に使うので家族を起こしたくない」といった希望は、機種選定とダクト計画に直結するため、最初に伝えておくのが得策です。

費用の目安として、換気設備一式で30万〜150万円程度を見込みます。差が大きいのは、ダクトの経路の長さと難易度によるところが大きいためです。内訳はシガールームの費用相場にまとめています。

DIYでどこまでできるか、どこから業者か

先に線を引いておくと、本格的な換気は工事なしには実現できません。それでも、施工までのつなぎとしてできることはあります。

  • 既存の換気扇を吸う前から回し、吸い終わったあともしばらく回し続ける
  • サーキュレーターで煙を換気扇のほうへ送り、部屋の中に滞留させない
  • ソファやカーテンなど、臭いを溜め込む布物を部屋から減らす
  • 可搬型の脱臭機を補助として併用する(換気の代わりにはなりません)

一方で、次の作業は自分では行えません。外壁に穴を開ける工事は、構造材や断熱・防水の層を避ける判断が必要で、位置を誤ると建物の性能に関わります。屋内の配線工事や専用回路の増設には資格が必要で、無資格での作業は法律で認められていません。集合住宅では外壁・窓・バルコニーが共用部にあたるため、管理規約の確認と管理組合への申請が前提になります。建築や消防に関わる取り扱いも物件ごとに違うため、可否は必ず事前に確認してください。

マンションで実現できるかどうかの判断材料はマンションで葉巻を吸うにはに、換気だけでは解決しない染み付きの問題は葉巻の臭い対策にまとめました。全体像から確認したい方は自宅シガールーム施工ガイドからどうぞ。

よくある質問

窓を2つ開ければ換気になりますか?

風が通っているあいだは空気が動きますが、量は風向きと風速まかせです。葉巻1本を吸い切る40分から1時間のあいだ、必要な換気量を保てるとは限りません。風が逆向きになれば煙は室内へ押し戻され、廊下や隣室へ広がります。屋外側でも、煙がそのままベランダや隣家の窓へ流れるため、近隣への配慮という点でもおすすめできません。機械で流れを固定するのが基本です。

キッチンのレンジフードの下で吸うのはどうですか?

レンジフードは風量が大きいので、窓開けよりは煙を捕まえられます。ただし吸い込み口が真上に限られるため、体の周りに広がった煙までは捉えきれず、リビングと一体の空間であれば臭いは家中に回ります。フード内部と共用ダクトにヤニが付着する点も気になるところです。マンションで既存のダクト経路を活かした排気計画を組むことはありますが、それは設計と工事を伴う話で、レンジフードの下で吸うこととは別のものです。

換気扇の音がうるさくなりませんか?

風量を上げれば音は大きくなりますが、設計である程度下げられます。ファン本体を室内の壁ではなく天井裏の離れた位置に置く、ダクトを太くして風の速さを落とす、消音用の箱を経路に入れる、といった方法があります。カタログには風量と一緒に騒音値が載っているのが一般的で、同じ風量なら数値の小さい機種のほうが静かです。「会話や音楽を邪魔しない静かさがほしい」と最初に伝えておくと、設計に反映してもらえます。

冬は寒くなりませんか?

外気をそのまま入れ替える計画なので、対策をしなければ冬は寒く、夏は暑くなります。実務的には、給気口を椅子から離して外気が体に直接当たらないようにする、吸っているあいだだけ強運転にして普段は弱運転に落とす、部屋の暖房能力に余裕を持たせる、といった組み合わせで対応します。熱交換型の給気設備という選択肢もありますが、排気側の臭いが給気側に戻りやすいタイプは喫煙室に向かないとされ、機器の選定に注意が要ります。費用も上がるため、優先順位を含めて設計者に相談してください。

換気をしっかりすれば、部屋に臭いは残りませんか?

吸っているあいだの煙は外に出せますが、壁紙・カーテン・ソファの布地に染み込む分までは換気だけでは防げません。換気は「その場の煙を外に出す」設備で、「染み付きを防ぐ」のは内装材の選定と気密、それに日常の使い方の役割です。両方をセットで計画すると、部屋を出たあとに臭いが残らない状態に近づきます。

20歳未満の方の喫煙は法律で禁じられています。本記事は住宅の喫煙環境づくりに関する情報提供を目的とし、喫煙をすすめるものではありません。費用・工事内容は物件により異なるため、実際の施工は専門業者にご確認ください。