葉巻スイタイ

葉巻に空気清浄機は効くのか

「空気清浄機を1台買えば、部屋で葉巻を吸えるようになるのか」。結論から言うと、浮いている煙の粒子はある程度減らせますが、においのもとになるガス成分と、部屋に染み付いていく臭いには力不足です。方式ごとにできること・できないことを整理したうえで、葉巻用途での選び方と、効果を出す使い方をまとめました。

更新日: / 葉巻スイタイ編集部

結論: 「補助」としては効きます。「解決策」にはなりません

空気清浄機が担えるのは、部屋に浮いている煙の粒子をフィルターで捕まえることです。ここは正当な効果で、運転していれば煙のもやが薄れるのが早くなり、目にしみる感じも軽くなります。何もしないより確実にましになるので、空気清浄機そのものが無意味ということではありません。

ただ、葉巻を部屋で吸うときの悩みのうち、空気清浄機が手を出せない部分がはっきりあります。

  • においのもとになるガス成分: においの正体は気体です。粒子を捕まえる網では素通りしてしまうため、活性炭のような吸着材に頼ることになりますが、家庭用の機械に積める量には限りがあります。
  • 壁や布に染み付く臭い: 空気中で捕まえきれなかった分は、そのまま壁紙・カーテン・ソファに付着していきます。一度染みたものを、あとから機械で抜くことはできません。
  • 部屋の空気を入れ替えること: 空気清浄機は部屋の空気を部屋の中で回しているだけで、煙を家の外に出しているわけではありません。ドアの隙間から廊下へ流れ出る分も止められません。

つまり、主役はあくまで換気(屋外への排気)で、空気清浄機はその補助という位置づけになります。換気設備を入れたうえで、換気が追いつかない瞬間の粒子を減らす役割を担わせる。この順番を逆にすると、「高い空気清浄機を買ったのに部屋が臭う」という結果になりがちです。換気の考え方はシガールームの換気設計にまとめています。

なぜ葉巻は、空気清浄機にとって厳しい相手なのか

同じ喫煙でも、紙巻きたばこと葉巻では機械にかかる負荷がかなり違います。理由は3つあります。

ひとつめは煙の量です。葉巻は煙を口の中で味わって吐き出すので、部屋に出る煙の量そのものが多くなります。加えて、火をつけている間は灰皿に置いていても先端から煙が出続けます。吸っている本人が吐く分だけでなく、置いている間もずっと発生源が動いている状態です。

ふたつめは時間の長さです。1本に40分から1時間かかるので、機械は濃い煙を長時間処理し続けることになります。数分で終わる相手と、1時間続く相手とでは、フィルターの消耗のしかたも変わります。

みっつめが粒子とガスの両方を含むことです。目に見える白い煙は微粒子ですが、翌朝まで残るにおいはガス成分によるものです。粒子の捕集が得意な機械でも、ガスには別の仕組みが必要で、その別の仕組みのほうが先に力尽きるのが普通です。

葉巻は「濃い煙が、長時間、粒子とガスの両方で出続ける」相手です。カタログに書かれた性能が嘘というわけではなく、想定されている使い方から外れているだけ、と考えるのが正確です。

方式別に、できること・できないこと

空気清浄機に入っている仕組みは、大きく「粒子担当」と「ガス・におい担当」に分かれます。一台に両方入っている製品が多いのですが、消耗の速さも役割も別物です。

方式得意なこと苦手なこと・注意点
HEPAなどの高性能フィルター煙に含まれる微粒子を捕まえる気体であるガス成分は通り抜ける。目詰まりすると風量が落ち、処理量そのものが減る
活性炭・脱臭フィルターにおいやガス成分を吸着する吸着できる量に上限がある。喫煙環境では飽和が早いとされ、飽和後は効果が落ちる
電気集塵フィルター交換に頼らず粒子を集める集塵部にヤニが付くため清掃の頻度が上がる。ガス成分は別に対策が必要
イオン・プラズマ系浮遊物の凝集や脱臭をうたう製品がある効果の程度は製品差が大きい。カタログの試験条件は実際の部屋と同じではない
オゾンによる脱臭強い脱臭力をうたう機種がある人がいる空間での使用について条件が定められている製品が多い。必ず取扱説明書の指示に従う

葉巻用途で押さえておきたいのは、先に力を失うのはたいてい脱臭側だという点です。粒子用フィルターが目詰まりすれば風量の低下でわかりますが、脱臭フィルターの飽和は見た目ではわかりません。「買った当初は臭いが取れていたのに、最近効かない気がする」という場合、機械の故障ではなく脱臭側が限界に来ているだけ、というケースが多いとされています。

葉巻用途で選ぶなら、どこを見るか

特定の製品をすすめることはしませんが、選ぶときの見方は共通です。以下の4点を、カタログの目立つ数字より優先して確認してください。

1. 適用床面積は、実際の部屋よりかなり大きめに取る

カタログの適用床面積は、一般的な生活空間を想定した試験条件にもとづく数値です。葉巻の煙はその想定より濃く、長く続きます。6畳の部屋なら6畳向けの機種、という選び方では追いつかないと考えて、部屋の広さの2倍から3倍の表示がある機種を候補にしておくくらいで、ちょうどよくなります。余裕がある機種を弱めに回すほうが、能力ぎりぎりの機種を全開で回すより静かで、フィルターの持ちもよくなります。

2. 脱臭側の中身が書かれているか

粒子の捕集性能は各社とも大きく表示しますが、葉巻で効いてくるのは脱臭側です。活性炭の量(厚みや重さ)が明記されているか、脱臭フィルターが交換式か、交換部品を単体で買えるか。ここが書かれていない製品は、脱臭を主目的にはしていないと考えたほうが無難です。

3. フィルター交換の頻度とランニングコスト

「数年間交換不要」といった表示は、通常の生活環境を前提にしたものです。喫煙環境ではメーカー想定より交換が早まるのが一般的で、その分ランニングコストがかさみます。本体価格だけでなく、交換部品の価格と、想定される年間の交換回数をかけ算して、維持費として見積もっておいてください。

4. 最大風量時の運転音

濃い煙を処理するには相応の風量が要るので、葉巻を吸っている間は強運転が常用になります。静音モードでは葉巻の煙にはまず追いつきません。最大風量にしたときの音を許容できるかどうかは、実際の使い勝手を大きく左右します。落ち着いて1本を楽しみたい部屋なら、なおさら無視できない要素です。

買ったあとに、効果を出す使い方

同じ機械でも、置き方と回し方で結果はかなり変わります。難しいことはありません。

  • 吸っている場所の近くに置く: 部屋の隅より、座っている椅子のすぐ横。煙が部屋中に広がって薄まってしまう前に吸い込ませるほうが、はるかに効率的です。
  • 吸込口・吹出口をふさがない: 壁や家具にぴったり付けると本来の風量が出ない機種があります。取扱説明書に指定された設置スペースを空けてください。
  • 火をつける前から回し、消したあともしばらく回す: 煙は火を消したあとも部屋に残ります。吸い終わってすぐ電源を切るのは、いちばんもったいない使い方です。
  • 換気と必ず併用する: 窓を閉め切って空気清浄機だけを回すより、屋外へ排気しながら併用したほうが結果は明確に良くなります。空気清浄機は、換気が追いつくまでのつなぎだと考えてください。
  • 吸い殻を放置しない: 消えかけの葉巻や吸い殻から出るにおいは強く、しかも空気清浄機の担当外です。ふた付きの灰皿を使うか、吸い終わったらその都度片付けるだけで、翌朝の部屋の印象が変わります。
  • フィルター交換をためらわない: 前の章のとおり、喫煙環境では交換時期が早まります。ここをけちると、機械を置いている意味そのものが薄れてしまいます。

それでも、空気清浄機では解決しないもの

ここまでを実行しても残るものが2つあります。この2つが、多くの方が最終的に施工を検討する理由でもあります。

ひとつは部屋に染み付く臭いです。空気中で捕まえきれなかった成分は、壁紙・カーテン・ソファ・本の背表紙まで、時間をかけて蓄積していきます。染みてしまったあとで機械を強化しても手遅れで、内装材の交換でしか戻せないところまで進むこともあります。臭いが染みる仕組みと、下地・仕上げ材で何が変わるのかは葉巻の臭い対策で解説しています。

もうひとつが隣の部屋への漏れです。空気清浄機には、部屋の気圧を下げる機能はありません。ドアの隙間・エアコンの配管穴・コンセントの裏など、目に見えない隙間から煙とにおいは外へ流れていきます。家族と暮らす家で問題になるのは、たいてい部屋の中の快適さではなく、こちらのほうです。

これらを止める方法は機械の買い足しではなく、気流の設計になります。排気を給気よりわずかに強くして部屋を負圧に保ち、空気が必ず「廊下からシガールームへ」の一方通行で流れるようにする。そうすれば、ドアを開けた瞬間に煙が廊下へ出ることもありません。ここまでやって初めて、空気清浄機は本来の「補助」として気持ちよく働きます。

換気設備を入れる場合にどのくらいの費用がかかるのかはシガールームの費用相場に、全体の進め方は自宅シガールーム施工ガイドにまとめています。空気清浄機を買い足すかどうか迷っている段階で、施工した場合の目安と比べてみると判断しやすくなるはずです。

よくある質問

空気清浄機を2台置けば大丈夫ですか?

1台より処理できる空気の量は増えるので、煙のもやが薄れるまでの時間は短く感じられるはずです。ただし台数を増やしても「部屋の空気を屋外へ出す」機能は生まれないため、壁や布への染み付きと、隣の部屋への漏れは変わりません。置くなら、吸っている椅子のそばに1台、空気が滞りやすい場所にもう1台、というように離して配置するのが基本の考え方です。

脱臭機と空気清浄機は何が違いますか?

呼び分けの線引きは製品によって異なりますが、一般には、空気清浄機は浮遊する粒子を捕まえることを主目的として脱臭機能を併せ持つもの、脱臭機はにおいやガス成分の処理に重点を置いたものを指すことが多いです。葉巻では粒子とガスの両方が問題になるので、名前ではなく、脱臭側にどれだけ手が入っているか(吸着材の量、交換部品の有無)で選ぶことになります。

フィルターはどのくらいで交換すればいいですか?

交換の目安は製品ごとに決められていますが、それは通常の生活環境を前提にした数値です。喫煙環境ではメーカー想定より早まるのが一般的とされているため、目安の期間が来ていなくても、風量が落ちてきた・運転してもにおいが取れなくなった、と感じたら交換を検討してください。飽和した脱臭フィルターは、においを取る力が落ちるだけでなく、においの発生源になることもあるといわれます。

においを検知して自動で強くなる運転にまかせて大丈夫ですか?

センサーが反応してから風量が上がる仕組みなので、どうしても後追いになります。葉巻は火をつけた直後から濃い煙が出続けるため、自動運転にまかせるより、吸い始める前に手動で強運転にしておくほうが確実です。吸い終わってからも、しばらく回したままにしておくことをおすすめします。

賃貸で工事ができない場合はどうすればいいですか?

工事ができない部屋では、空気清浄機や脱臭機と、運用の工夫(吸う場所を1か所に決める、カーテンやラグなど布製品を減らす、換気扇を回しながら吸う)の組み合わせが現実的な上限になります。それでも染み付きを完全に防ぐのは難しいので、退去時の原状回復まで見込んで判断するのが安全です。

20歳未満の方の喫煙は法律で禁じられています。本記事は住宅の喫煙環境づくりに関する情報提供を目的とし、喫煙をすすめるものではありません。費用・工事内容は物件により異なるため、実際の施工は専門業者にご確認ください。